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アーム選び
アーム選び
コンパクトデジタルカメラのハウジングを買ってみたものの、ウミウシや魚の群れ、サンゴ礁など、撮りたいものがイマイチ上手に写らないと嘆く、水中ビギナーのアナタにぜひ使ってもらいたいのが「アーム」。
このパーツがあれば、光を自在に操り、よりキレイな写真が撮れてしまうのです!
Q.アームって何ですか?
ストロボやライトを付けて被写体に光を当てるパーツです。
軽くて頑丈なアルミ素材のアームには、両端に丸い玉「アームボール」が付いています。アーム本体が腕だとすれば、この丸い玉は関節。関節どうしをクランプというパーツでつなぎ、その先端の手のひらに当たる部分に被写体を照らすストロボかライトをセットします。つまりアームとは人間の腕と同じように、上下左右、自在に動きながら、いろいろな角度からストロボやライトの光を撮りたいものに当てられるパーツなのです。
Q.では、なぜ外付けのストロボやライトが必要なの?
被写体の色を忠実に写し出し、キレイな写真を撮るためです。
小さな生物、泳ぐ魚、ソフトコーラルの群生など、水中で目にするものは青色に染まって見えます。水中へ深く潜っていくにつれ、水中に射し込む太陽光のうち、赤やオレンジ、黄色などの波長の長い色は消え、波長の短い青だけが残るためです。そのためビビッドな色、繊細に組み合わされる色といった、生物が本来持つ魅力的な色を写真や動画に写し出すためには、ストロボやライトの人口光を当ててあげる必要があるのです。
ほとんどのコンパクトデジタルカメラには、小さなフラッシュが内臓されています。陸上では充分効果を発揮する内臓フラッシュですが、水中で活躍するシーンはかなり限定されます。
水中では光が減衰するため、到達する範囲が激減します。
また内臓フラッシュはレンズのすぐ横で発光するため、レンズ前の浮遊物に光が反射し、画像にいくつもの白い点が写り込みます。クローズアップレンズやワイドコンバージョンレンズなどを装着すると、内臓フラッシュがレンズに遮られることもあります。
【内臓フラッシュだと...】
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光が全体に届いていない
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フラッシュ光が全体に届かず、さらに浮遊物が白く写り込んでいる
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青かぶりしている
海中の青い自然光の影響が強くなると、被写体も背景も青かぶりする
【外付けストロボを使うと...】
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全体を明るく照らしている
ストロボ光が全体を均一に照らし、浮遊物を目立たなくすることもできる
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被写体本来の色が出る
ストロボの強力な光によって、被写体が身にまとている色を再現できる
最近のコンパクトデジタルカメラで流行の「高感度モード」のなかには、自然光を重視するばかりに、水中の青い光が効いた「青かぶり」した画像になるものもあります。
水中で撮影した写真を見て、もっとキレイに撮りたいと思ったなら、外付けのストロボやライトを試してみてください。効果は絶大です。
Q.アームって役に立つの?
はい、自由自在なライティングに欠かせません。
先にも述べたように、アームはいわば腕と同じ。カメラをホールドする両手、両脇の代わりにストロボやライトをホールドし、いろいろな角度から被写体に光を当てることができるパーツです。光を当てる角度を変えることによって、被写体の影の出方をさまざまに変えられ、写真を好みの雰囲気に調節できます。
ライトスタンドで机の上にある物を真上、真横、斜め横からそれぞれ照らしてみると、影の出る位置の違いが理解できると思います。
水中に浮遊物が多く濁っている状況では、長いアームでストロボをカメラからできるだけ離して光を当てると、浮遊物の写り込みを抑えられます。また、カメラの両側からアームを伸ばし、2灯のストロボを発光すれば、広範囲に光を当てたり、左右のバランスを変えた光を当てたりすることも可能です。
このように、アームは光を操りながら写真を楽しむ上で必須のパーツです。
- 被写体の雰囲気を調節できます。
ポートレートを撮るとき、朝、昼、夕方と太陽の高さによって、また順光か逆光かなど太陽の向きによって、目の下、鼻の横、頬などにできる影の出方が違ってきます。
同じように、ストロボを太陽に見立てて光を当てる位置を変える事で、被写体上にできる影の量や濃さが変わり、質感や立体感、雰囲気が変わります。左の写真はほんの一例で、魚が左を向いているか右を向いているか、横向きか正面を向いているか、近いか遠いかなど、条件により写り方は様々です。自由自在に動くアームがあれば、被写体の状態に合った位置にストロボを固定して撮影ができるのです。 - 被写体の影を柔らかくできます。
ストロボ1灯のみで光を被写体に当てると、真上、真横、斜め、いずれのアングルからの照射でも被写体の周りに影が出ます。その影が、魚の美しさや可愛さを台無しにしているからと言っても、海の生き物は、撮影者の思い通りの方向を向いてくれません。被写体の向きや周囲の状況に合わせて、ストロボの位置を調節する必要があります。
それでも影が気になるようでしたら、左右から2灯のストロボを被写体に当てると影を柔らかくすることができます。この2灯のストロボの光量や位置をそれぞれ変えることで、立体感や奥行き感、そして写真全体の雰囲気を自在に操ることができるのです。 - 水をクリアに撮れます。
春から夏に海藻が溶け出す海、プランクトンが豊富な海、海底の砂泥が舞いやすい海など、クリアな海をダイビングする機会は意外と少ないもの。海の中にはたいてい、たくさんの浮遊物が漂っています。
カメラのすぐそばからストロボの強い光を当てると、浮遊物に反射して写真に白い点がたくさん写り込んでしまい、とても目障りです。そんな困り者も、長いアームを用いてカメラからストロボを離し、さらにカメラより少し後ろに下げる事で、写り込みがあまり目立たなくなります。
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右からストロボ1灯
魚の後ろに強い影が出ている
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右からストロボ2灯
魚のまわりの影が柔らかくなる
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短いアーム
浮遊物が写り込みやすい
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長いアーム
浮遊物が目立たなくできる
Q.アームにはどんなパーツがあるのですか?
まずはベースが必要です。
コンパクトデジタルカメラ用ハウジングにストロボやライトを取り付けるには、まずベースというパーツが必要になります。その基本となるのが「グリップベースD4」。
これはベーストとグリップ機能を兼ね備えたパーツで、グリップ部の上端にアームやアダプターなどを接続することで、ストロボやライトを固定することができます。
必須の「グリップベースD4」
ストロボ1灯の基本セットはまずこのパーツをハウジングに取り付ける事からスタート。撮りたいものに応じてアームやアダプター類を組み合わせ、ストロボやライトを固定します。
必要に応じて...「Dホルダー」
グリップベースD4にこのDホルダーを増設することで、ストロボやライトを左右に取り付けられます。
短いアームと長いアームがあります。
コンパクトな短いアームから、長いアームまで、豊富に揃うイノンアーム。あまり動かない小さな生物から単体を泳ぐ魚、超ワイドの風景まで撮りたい被写体の種類や大きさ、透明度などの海況、クローズアップレンズやワイドコンバージョンレンズの使用など、撮影条件に合ったアームを選べます。
ベースとアーム、アームとストロボ/ライトを接続するためのパーツがあります。
「グリップベースD4」にアームを取り付け、そのアームにストロボやライトを取り付けるためのパーツが各種あります。中にはストロボやライトを、アーム無しで直接「グリップベースD4」やハウジングのアクセサリーシューにセット可能なパーツもあります。その中から、より使用される基本的なパーツを紹介しましょう。
Q.アームは便利。ライトやストロボは有効なものは理解できました。それでも、かさばったり、カメラの持ち運びが大変になるのはイヤなのですが?
ミニマムなセットがあります。
ストロボやライトをアームによりハウジングにセットするメリットは理解できた。けれど自分はやっぱりなるべく身軽にダイビングと水中写真や動画の撮影を楽しみたいという人は、コンパクトかつミニマムなセットをチョイスすることができます。ハウジングに直接、あるいはアーム無しでストロボやライトを取り付けるためのパーツを選んで、ライトやストロボをセットしてください。
クローズアップレンズを1枚だけ付けて、ウミウシやカクレエビなど小さな生物を撮る場合、内臓フラッシュはレンズが邪魔になって光が届きにくくなってしまいます。そこで、LEDライトを追加するだけで、近距離のマクロ撮影なら十分に照らし出せます。少し離れた被写体も撮りたい場合は、さらに強い光を照射できるストロボを使ってみましょう。
ミニマムなセットでは、常に一定方向からだけのライティングになり、表現の幅は限られてしまいます。また、クローズアップレンズを使用して、最短撮影距離から小さな生物を撮った時、トップ側だけに光が当たり、お腹側が暗くなってしまうこともあります。
しかし、カメラの扱いに不慣れな人には、確実に被写体へ光を当てる事のできる、かえって有効なシステムとも言えます。
水中写真を始めたばかりの頃は、このミニマムなセットでスタートし、腕を磨いたらオプションパーツを追加して、ステップアップしていくものもよいでしょう。
Q.さらにキレイに撮る方法はありますか?
はい、撮りたいものに合わせてパーツを組み合わせていけば可能です。
コンパクトデジタルカメラの操作や、水中での持ち運びに慣れてきたら、より自由に、よりキレイな写真や動画が撮れるライティングシステムにステップアップしてみてください。
ここではミニマムとはひと味違う、よりキレイな写真を撮ることのできる追加オプションパーツ。
- 小さな生物と背景をキレイに撮りたい。
ミニマムのシステムでは、ストロボの位置や向きが限定されるため、主役の生物に思わぬ影が付いたり、画面に映っている周囲全体に光が届かなかったりすることがあります。その生物がどんな環境に住んでいるかなど、背景もキレイに写しこむには、追加のパーツが必要です。 - 群れや風景をキレイに撮りたい。
変幻自在にカタチを変える群れや広大な風景を撮る場合、広い範囲を照らしたり、被写体との間に漂う浮遊物を写しこまないために、ストロボをレンズより後ろに下げたりカメラから離すといったライティングが求められます。そのためには、長めのアームが必要となります。 - 超ワイドの写真をキレイに撮りたい。
ドームレンズユニットやフィッシュアイコンバージョンレンズなど、さらに広角なレンズを使う場合、ストロボを2灯使用した方がより広い範囲を照らすことができます。長いアームを広げてストロボを離し、画面の隅々まで光が行き渡るようストロボの向きを調整します